New Food Industry 2018年4月号

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New Food Industry 2018年 4月号

総 説

多彩な生理活性を有する海藻アカモクの抽出素材を用いたサプリメント
Supplemental application of marine algae Sargassum horneri component with a diverse bioactivity

山口 正義(YAMAGUCHI Masayoshi)

Supplemental application of marine algae Sargassum horneri component with a diverse bioactivity

Masayoshi Yamaguchi/Department of Pathology and Laboratory Medicine, David Geffen School of Medicine,University of California, Los Angeles (UCLA), CA, USA.

Abstract
 Functional food factors may play a preventive and therapeutic role in various human diseases. We demonstrated that marine algae Sargassum horneri (S. horneri) reveals restorative effects in various types of metabolic disorder. Osteoporosis, which induces bone loss associated with aging, is widely recognized as a major public health problem. Bone loss with aging and diabetic states was prevented by the intake of bioactive component obtained from S. horneri extract in vivo stimulating osteoblastic bone formation and inhibiting osteoclastic bone resorption. Interestingly, the intake of S. horneri bioactive component was found to reveal preventive effects on diabetic findings with increases in serum glucose and lipid components, enhanced adipogenesis from bone marrow cells, and growth of breast cancer cells, which are related to inflammation conditions. Importantly, S. horneri bioactive component (less than 1000 molecular weight) was found to suppress the activation of NF-κB induced by tumor necrosis factor-α, a cytokine related to inflammation, suggesting molecular mechanism. S. horneri bioactive component may play a multifunctional role in the prevention and treatment of metabolic disorder. This bioactive material may be useful as a dietary supplement in keeping of health care.

[Keywords: Sargassum horneri, osteoporosis, diabetes, obesity, cancer, NF-κB, supplement]

 食因子が生体機能を調節するとの知見については,食と健康に関する多岐にわたる情報を提供しつつ,健康保持ならびに疾病の予防と修復の一助として大きな役割を果たしている。筆者は,生体における骨およびカルシウム代謝の調節の仕組みの解明の研究に従事していた。骨組織は,骨塩溶解をもたらす破骨細胞の機能により古い骨を破壊し,そこに骨を造成する骨芽細胞が出現して,新しい骨組織を形成し,たえず柔軟な弾力性のある骨を保持するメカニズムを有している。これは骨の再構築(bone remodeling)とよばれている1)。このバランスが加齢や多くの病態によって崩れると,骨量が減少し,いわゆる骨粗鬆症をもたらす。この骨疾患は,易骨折性を示し,骨折による寝たきりの原因となり,生活に支障をきたし,致死を早める。本症は近年の高齢化人口の増大に伴って年々増加しており,その予防は多くの関心がもたれていた。
 そこで,筆者は,食品由来因子の骨代謝調節機能の解明とその骨粗鬆症の予防と修復に関する研究に強い関心をもち,国内外に先駆けて遂行してきた2-4)。その過程において,筆者らは,静岡県近海(下田市)で採取した海藻ワカメ(Undaria pinnatifida;ワカメ属),アカモク(Sargassum horneri;ホンダワラ属),アラメ(Eisenia bicyclis;アラメ属),オオバキントキ(Cryptonemia scmitziana;カクレイト属),マクサ(Gelidium amansii;テングサ属)および浜名湖生息のアオサを用いて,その抽出成分の骨カルシウム量に及ぼす効果について調べた5)。その結果,食用藻類の中で,アカモクの水抽出成分には強い骨カルシウム量増進効果を特異的に発揮するとの知見を見出すことに成功した(日本国特許)。
 アカモクは,日本および中国の沿岸に棲息し,比較的波の穏やかな海底の岩場に,冬から春にかけて成育する。この海藻は,繁殖が著しく,漁網や船舶のスクリューに絡み,ほとんど活用されていなかった。一部の地域においては食用に利用されていたが,多くは環境に廃棄されていた。この海藻は,コンブ,モズクやワカメが属する褐藻で,程よいヌメリと独自の歯ごたえのある食感で,おいしくて健康によい海藻として,古くから秋田,岩手,富山,能登半島などの地域では佃煮や生食として食用されていた6)。なお,アカモクには,他の海藻と比較して含有量が著しく多い栄養成分として,カロチン,ビタミンC,ビタミンB2,食物繊維,ミネラルや微量元素などが知られている6)。
 その後,筆者らは,アカモク抽出成分には,骨量増進効果に加えて,糖尿病における高血糖および高脂血症を改善する効果,肥満と関連する脂肪細胞の形成を抑制する作用,さらには乳がん細胞の増殖と細胞死をもたらす作用(米国特許)発揮することを見出した。これらの作用発現には,アカモク成分が上記の病態の発現に重要な細胞内の情報伝達分子のNF-κBの形成とその活性を抑制するメカニズム(日本国特許)に基づくことを明らかにした。このように,アカモク水抽出成分は,多岐にわたる病態を予防,改善する効果を発揮することが見だされ,健康増進に役立つ多彩な生理活性を有する漢方薬的な効用が期待された7)。
 本稿においては,アカモク水抽出成分の生理活性に関する筆者らの知見を概説し,これを素材にした保健サプリメントの開発について考察する。

油脂への嗜好とその健康効果

藤田 哲(FUJITA Satoshi)

 霜降り牛肉やマグロのトロなど,適量の油脂を含有する食材は旨みを増す。元来油脂をほとんど含まない野菜などを油で揚げた天ぷらも,また大変美味である。野菜サラダにはサラダ油やマヨネーズが用いられ,トーストにはバターがぬられる。良質の水に恵まれない世界の内陸地方では,ラードなどの獣脂やバターを用いた調理が発達した。水に恵まれた日本では,古来から主に水による調理が行われ,油は夜間の光源であった。
 欧米では,食用と工業用を含めた一国の油脂消費量は,その国の文明水準に比例するとされる。2011年の一人当たり植物油消費は,アメリカで42.4 kg,ドイツは68.7 kg,フランスとイタリアは50 kg弱,世界平均は22 kgであった。他方,日本人一人当たりの植物油消費は,同年に19.1 kgと世界平均以下であった。南欧の地中海沿岸地域では,人々はパンにオリーブ油を浸して食べている。なお,常温で油は液体,脂は固体の状態で,合わせて油脂と称する。

脂肪酸添加加熱処理を施した難消化性処理
澱粉の消化率と澱粉内部脂肪酸量との関係

中嶋 奎太(NAKASHIMA Keita),秋山 美展(AKIYAMA Yoshinobu)

 澱粉に脂肪酸を添加し加熱することで食後血糖値の上昇を抑制できる可能性のある澱粉素材の開発を目指している。これまでにわれわれは,澱粉にパルミチン酸やリノール酸を添加し加熱することによって難消化性が付与されることを報告した1)。脂肪酸添加による澱粉への難消化性付与のメカニズムを解明するため,馬鈴薯澱粉に脂肪酸(ステアリン酸,オレイン酸)を添加し,加熱処理をして難消化性を付与させた澱粉の消化率と,澱粉と複合体を形成すると考えられている脂肪酸(以下,内部脂肪酸)の量との関係について調べた。澱粉消化率の測定は前述の森らの方法を用いて評価した。内部脂肪酸量は,西谷ら2)の脂肪酸分析方法を一部改変して定量した。
 一般に,澱粉内にある脂質成分はエチルエーテルなどの有機溶媒で抽出される外部脂質と有機溶媒では抽出されず澱粉粒内に存在する内部脂質と区別される。内部脂質はTaylorら3)によって初めて確認され,Mikusら4)が,この内部脂質はアミロースらせん内に含まれていることを報告した。この澱粉分子中の内部脂質の大部分が遊離脂肪酸であることが確認されており,この内部脂肪酸は85%熱メタノールで繰り返し処理することで除くことができる(古川ら5), 藤本ら6))。また,森らは脂肪酸が澱粉と複合体を形成し,疎水領域を形成することが酵素分解グリセミックインデックス(EGI)の低下の要因であることを示し,結果として馬鈴薯澱粉にパルミチン酸やリノール酸を添加し,加熱処理を行う簡便な食品加工処理によって馬鈴薯澱粉に難消化性を付与させうることを報告している1)。
 内部脂肪酸量は澱粉ドライベース 1 gあたり4 mgまでは内部脂肪酸量の増加に伴い,澱粉の消化性の指標としている酵素分解グリセミック指数(EGI)が減少する傾向を示したが,約4 mg/gより多くなるとEGIの大きな変化は見られなかった。馬鈴薯澱粉に脂肪酸を添加して加熱処理を行うことで難消化性が付与されるが,内部脂肪酸量が約4 mgに達すると澱粉脂肪酸複合体の形成は飽和状態になり,それ以上脂肪酸を添加しても消化率に影響がないことが示唆された。
 本研究の目的は,澱粉と複合体を形成しうる内部脂肪酸を定量し,内部脂肪酸量と消化率の関係を検討することで脂肪酸添加による澱粉への難消化性付与のメカニズムを明らかにすることである。馬鈴薯澱粉にステアリン酸やオレイン酸を添加し,森らの方法を用いて難消化性付与を試みた。さらに,内部脂肪酸量を定量しEGIと内部脂肪酸量の関係について検討した。

美味しいパンを作る秘訣は脂肪酸を上手く利用することにある?

豊﨑 俊幸(TOYOSAKI TOshiyuki)

 メイラード反応は,糖質とアミノ化合物の成分間反応であり1),食品の加工,保存調理で誘発され,食品の褐変や香気生成に関与している。メイラード反応を誘発する成分としては,アミノ化合物として,アミン,アミノ酸,ペプチド,たんぱく質,核酸塩基,アミノ脂質などが知られている。カルボニル化合物としては,L-アスコルビン酸,ポリフェノール化合物あるいはステロイド化合物が報告されている2-11)。
 メイラード反応の開始段階として,アミノ基の窒素の独立電子対は,カルボニル炭素と求核反応により結合し,脱水によりイミンが生成することから反応が開始される5, 6)。この反応で生成された物質が新たな反応を誘発される結果,食品の色素や香気を含める様々な生成物が,様々な経路により生成することとなる。メイラード反応は,食品加熱により,色や香りに大きな影響を与えることは既知の事実である10)。パンの焼き色や香りは,人間の嗜好性を高めるため,加熱によるメイラード反応の誘発は食品学分野ではメリットとして考えられる。
 ところで,中鎖脂肪酸のみで構成されている中鎖脂肪酸含有油脂(以下MCTと略す)に関しては1950年に最初に,迅速な吸収で引き起こされた吸収不良症候群の食事療法で使用されたのがきっかけで,それ以来多くの優れた報告がなされた12-30)。
 MCTの特徴の一つとして,通常の食事に含まれている油脂(長鎖脂肪酸含有油脂)に比較して,消化・吸収されやすく体内で酸化分解されやすい性質のあることが報告されている13, 14)。この現象は長鎖脂肪酸含有油脂に比較して非常に特異的であり,この効果は抗肥満作用として考えられることから,現在では特定保健用食品として様々な用途に使用されている。
 MCTに関する報告のほとんどは臨床栄養学分野あるいは生化学分野から主に追跡されてきたが,食品科学分野からの報告は筆者が知る限りに於いてはほとんど見あたらないのが現状であることから,今後は食品科学分野からの追跡が必要不可欠である。  
 MCTにかかわらず食物はすべて最終的には人間が摂食するからである。MCTの生体に対する効果が優れていても,摂食しなくては全く意味をもたないものになってしまう。また,基本的に摂食するためにはその食物が美味しくなくてはならない。この壁をクリアーしなければMCTの優れた特性を利用できない。
 ここ数年来,我々はMCTの食品科学的特性を明らかにすることを目的として,パン焼成時に誘導されるメイラード反応とMCTとの関係について追跡した結果,メイラード反応生成物(AGEs)量がMCTにより抑制されることと,併せ添加した脂質の性状により褐変度合いに差異のあることを確認した31)。
 ここで紹介する研究内容は,最終的に美味しいパンを作る手段の一つとして,焼成時に誘導されるメイラード反応を上手くコントロールすることが重要と考えた。そのためにはどのような方法があるものかを探る必要があり,今回MCT構成脂肪酸である中鎖脂肪酸がメイラード反応に対してどのような影響を及ぼしているのかを確認するため,短鎖,中鎖および長鎖脂肪酸(飽和および不飽和脂肪酸)を用いて様々な角度から検討した結果,若干の知見が得られたので,それらの内容を紹介する。

健康商品の新たな受託製造ビジネスを目指して
ホヤ由来プラズマローゲンを配合した腸溶性ソフトカプセルの開発

又平 芳春(MATAHIRA Yoshiharu),渡邉 博文(WATANABE Hirofumi),大川原 正喜(OKAWARA Masaki)

 健康食品の受託製造市場は緩やかな拡大基調を辿っており,2016年度は対前年比1.5%増の1,482億円と推定されている1)。受託製造企業各社が工場の増設,増産体制を進めており,製造受託を巡る競争が激しさを増している。取引先への提案型営業,展示会やセミナー等を通じた新規顧客の獲得に加え,競合他社との差別化策として,新たな製剤技術の提供や独自原料の展開を図る動きが見られる。当社三生医薬株式会社も,創業以来培ってきた製剤技術に加え,近年は独自の機能性食品素材の開発にも注力し,機能性製剤技術と独自素材を融合させた新たなビジネスモデルの構築を目指している。即ち,独自のマーケティングから市場の求めるヘルスベネフィットを決め,そのヘルスベネフィットを最大限に発揮できる機能性素材と製剤技術を同時開発し,機能性表示食品の届出を含めて顧客にパッケージとして提案するスキームである。
 本稿ではその一例として,脳機能の維持・改善効果が期待できるホヤ由来プラズマローゲンを配合した腸溶性ソフトカプセル製剤について紹介する。

連 載
デンマーク通信

デンマークのお茶

Naoko Ryde Nishioka

今回はお茶(Tea)にまつわる話を紹介したいと思います。
 以前にも紹介しましたが,デンマークはコーヒー消費大国で,コーヒーの一人当たりの消費量は世界でもトップレベルです。家庭でもオフィスでも,朝から夜までコーヒーは欠かせない飲み物です。そんなコーヒーに比べると,お茶(Tea)の存在感は小さくはなるものの,コーヒーと同様に,家庭でもオフィスでも,喫茶店でも色々な場面で登場します。

野山の花 — 身近な山野草の食効・薬効 —

ハシリドコロ Scopolia japonica Maxim.(ナス科 Solanaceae)

白瀧 義明(SHIRATAKI Yoshiaki)

 4月,桜の季節が過ぎ,山々が萌黄色に色づきはじめた頃,山歩きをしていると,少し,湿り気のある林の中で小さなロート状の花を付けた草花を見かけることがあります。これが,有毒植物として有名なハシリドコロです。本植物は,別名をサワナス,オメキグサなどといい,食べると錯乱して走り回ること,また,根茎がトコロ(野老)に似ていることから名づけられました。ハシリドコロは本州・四国・九州の谷あいなどの湿った木陰などに見られる多年草で,草丈は30〜60cm,早春に芽生え,茎は直立して枝分かれし,4〜5月に葉腋から1個の花を下垂し,外面が暗紫色で内面が黄緑色のやや五角形の釣り鐘状の花をつけます。地上部は7月頃までに枯れてなくなってしまいますが,早春に生える新芽がフキノトウに似ていて,誤食による食中毒を起こすことがあります。見分け方は,フキノトウの苞には白い綿毛が密生していますが,ハシリドコロの芽には毛はほとんどありません。 また,フキノトウの苞の中にはつぼみがたくさん詰まっていますが,ハシリドコロの芽の中は葉が重なりあっているだけでつぼみは少ないのが特徴です。

解 説

ササヘルスによるホルメシスおよび細胞保護効果の誘導
Induction of hormesis and cytoprotective effect by Sasahealth

坂上 宏 (SAKAGAMI Hiroshi),友村 美根子 (TOMOMURA Mineko),増田 宜子 (MASUDA Yoshiko),岩間 聡一 (IWAMA Soichi),中川 美香 (NAKAGAWA Mika),鈴木 隼人 (SUZUKI Hayato),田中 健大 (TANAKA Kenta),
阿部 智之 (ABE Tomoyuki),田村 暢章 (TAMURA Nobuaki),竹島 浩 (TAKESHIMA Hiroshi),安井 利一 (YASUI Toshikazu),辻 まゆみ (TSUJI Mayumi),木内 祐二 (KIUCHI Yuji),小口 勝司 (OGUCHI Katsuji),堀内 美咲 (HORIUCHI Misaki),藤澤 知弘 (FUJISAWA Tomohiro),勝呂 まどか (SUGURO Madoka),大泉 浩史 (OIZUMI Hiroshi),大泉 高明 (OIZUMI Takaaki)

要約
 クマ笹葉アルカリ抽出液(ササヘルス®)は,ヒト歯肉上皮前駆細胞(HGEP)に対するドキソルビシンの傷害作用,分化した神経様細胞に対するアミロイドβ-ペプチドの傷害作用を濃度依存的に抑制した。未分化神経細胞に対しては,ササヘルス®は保護効果を示したが,多くのポリフェノール類は保護効果が弱いか,無効であった。ササヘルス®による細胞保護作用の発現に,低濃度で見られる増殖促進活性(ホルメシス効果)が関与する可能性が示唆された。

SUMMARY
 Alkaline extract of the leaves of Sasa senanensis Rehder (Sasahealth®) (SE) dose-dependently inhibited the doxorubicin-induced cytotoxicity against normal human gingival epithelium progenitors, and the amyloid β-peptide-induced cytotoxicity against differentiating neuronal precursor cells. Sasahealth® also showed the protective effect on immature neuronal cells, whereas many lower molecular polyphenols showed little or no protective effect. Growth-stimulation activity observed at lower concentration of Sasahealth® (so-called 'hormesis') may be involved in the expression of the cytoprotection effect of Sasahealth®.

機能性物質の養魚用飼料への添加効果−3.アスタキサンチン,ヌクレオチッド

酒本 秀一(SAKAMOTO Shuichi,海野 徹也(UMINO Tetsuya)

 アスタキサンチンは赤橙色を呈するカロテノイドの一種で,主に海産魚の筋肉や体表に多く含まれる。魚類をはじめ,動物は一般にカロテノイドを生合成出来ないので,飼餌料に含まれるカロテノイドをそのまま,あるいは他の色素に体内で転換した後各組織に蓄積して独自の色調を表している3)。
 養魚飼料を中心とする水産用飼料の分野では,体表色の改善(マダイ4, 5),甲殻類4),サケ・マス類6),観賞魚7))や肉色の改善(サケ・マス類6))等に利用されている8)。
 アスタキサンチンの供給源としてイサザアミ,オキアミ,エビ・カニ色素抽出油,赤色酵母,ヘマトコッカス等がこれまでに検討されてきた。何れも効果は認められるが単位色素量当たりの価格が高いのが難点で,合成アスタキサンチンの使用が認められるようになってからは合成品が用いられることが多い。
 アスタキサンチンには体色改善効果以外にも色々な効果が有ることが知られている9, 10)。その中でも最も毒性の強い活性酸素である「一重項酸素」と「過酸化脂質」の消去力が強いことはよく知られている。筆者ら11, 12)もアスタキサンチンが「一重項酸素」と「過酸化脂質」の消去を通じて魚の抗病性を向上させたり,メラニンの合成を抑制したりする可能性が有ることを報告した。
 ここではアスタキサンチンを添加した飼料でアユを飼育した時の効果について報告する。

加工食品における泡構造,多孔構造について

小谷 明司(KOTANI Akiji)

 本稿で泡構造は実質(ボディー)で構成された膜と,それらに区画された比較的均質な微細な空洞が連続した状態と定義する。食品のパフ『膨化』について記述した文献は目にしたと記憶するが,泡構造に注目したものはなかったと思う。多孔構造は泡構造を含むが,空洞は均質でなくてもよい。
 泡構造は自然界の様々な場面に出現し生命体も利用する。銀河系星雲の集合体である星雲団が泡状に散在することは宇宙開闢プロセスの痕跡と考えられている。肺は肺胞の泡構造で表面積を稼ぎ血液中の二酸化炭素と空気の酸素との交換を効率化している。化学工業で泡構造の合成樹脂製品は断熱材,クッション材として量産される。食品加工においても泡構造は伝統的・経験的に,あるいは特性を理解したうえで利用される。

解説
グルテンフリ−ベーカリー食品 その仕込みと加工 (3)

瀬口 正晴(SEGUCHI Masaharu),木村 万里子(KIMURA Mariko)

要約
 本論文「グルテンフリ−ベーカリー食品,その仕込みと加工(3)」は,米国の穀物科学者,Jeff Casper とBill Atwell によって書かれた本(“Gluten-Free Baked Products” 2014 by AACC International, Inc. 3340 Pilot Knob Road St. Paul, Minnesota 55121, U.S.A. ) の一部( ”Gluten-Free Bakery Product Formulation and Processing”)を翻訳し紹介するものである。グルテンフリーパン,ケーキ等について述べる。


 これまでのクッキー,ケーキ,パンだけが,グルテンフリーマーケット上のグルテンフリー食品ではない。これまで述べたクッキー,ケーキの仕込みは,多くの関連食品のいろいろなものの製造に応用できる。フレーバー,粉末は,多くのクッキーやケーキ製造に用いることができる。サトー,脂肪,他成分の添加レベルを変えると,いろいろ異なったテクスチュアのグルテンフリーベーカリ食品を作る事ができる。これらの操作は,小麦粉ベースの類似各種ベーカリー食品の仕込みによく似ている。
 ある簡単な例として,表4.5のイエローケーキの仕込みはマフィンの仕込みをベースにしたものである。伝統的なマフィンは,ふつうケーキより砂糖,脂肪含量が低い。ここでこれらの成分の低レベル化で,グルテンフリーイエローケーキの仕込みはマフィンのフレーバー,テクスチアの点でよく似たものになる。全てのものがでそろってくると,最も良いものをつくるための新しい仕込みをつくる実験が必要となる。