New Food Industry 2014年12月号

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New Food Industry 2014年 12月号

難消化性デキストリンの腸内発酵を介した生理機能

宮里 祥子、岸本 由香、大隈 一裕

 食品による健康の維持増進に対する消費者の関心は高く,特定保健用食品や栄養機能食品といった保健機能食品や健康志向食品の市場規模は拡大を続けている。特定保健用食品の3割を超える品目に関与成分として利用されている難消化性デキストリンは,これまで,整腸作用や食後の血糖および中性脂肪の上昇抑制作用,継続摂取による内臓脂肪低減作用等の生理機能が注目され,多くの食品や飲料に使用されてきた。これまで明らかにされてきた難消化性デキストリンの生理機能は,主に上部消化管での栄養素の吸収遅延による機能であった。一方,下部消化管においては,難消化性デキストリン摂取が腸内細菌叢およびその代謝産物である短鎖脂肪酸の生成に及ぼす影響をヒトにおいて検討した結果,便中短鎖脂肪酸のうち酪酸が増加すること,および便中のビフィズス菌が増加し腸内菌叢の比率が変化する傾向が確認されている1)。近年の腸内細菌に関する研究は,解析技術の飛躍的向上により菌のメタゲノム解析や代謝産物のオミクス解析等が可能になっている。これにより,腸内細菌およびその代謝産物と,疾病や代謝調節との関連について解明が進み,プロバイオティクスやプレバイオティクスが健康状態に及ぼす影響に対してこれまで以上に注目が集まっている。
 難消化性デキストリンの摂取により菌叢や代謝産物が変化することが明らかとなったことから,我々は腸内細菌の資化を介した生理機能に注目して研究を進めており,本稿でそれらの研究成果を紹介する。

冷凍ドウの再ミックスによる製パン性復元の研究

森元 直美

要 旨
 3種類のパンドウA,B,Cを作製し製パン試験を行った。パンドウAは小麦粉,砂糖,食塩,水を混合したドウ,パンドウBはパンドウAにイーストを加えて混合したドウ,そしてパンドウCは,パンドウBを一次発酵,成形,二次発酵したドウのことである。それらのパンドウを-20℃で6日間冷凍し,4℃の冷蔵庫内で16時間かけて解凍した。解凍後はそれぞれの製パン工程を経て製パンした。その結果,パンドウAとBのパンの製パン性(パン高,比容積)は,コントロール(未冷凍パンドウ)と同様の製パン性が得られた。しかしながら,パンドウCの製パン性はコントロールに比べ,大きく低下した。解凍したパンドウCからの遊離液体量は増加した。解凍したパンドウCに砂糖を加えたパンドウC-1,そしてパンドウCに砂糖とイーストを加えたパンドウC-2を作り,それらの製パン工程を経た製パン試験を行った。その結果,パンドウC-2の製パン性はコントロール同様の値を示した。さらにパンドウC-2において,一次発酵を省いた時には,製パン性の低下がみられた。冷凍・解凍したパンドウC(60 g)をプラスチックの筒(直径5.0 cm,長さ16 cm,厚さ3 mm)に入れ,減圧下でドウの伸展性をコントロールのパンドウと比較した。パンドウCの伸びは高さ50 mmで,それに対するコントロールの伸びは70 mmであった。しかし一次発酵,成形,二次発酵を経たパンドウC-2は,コントロール同様の伸展性を示した。これらのことは解凍したパンドウCのドウマトリックス中に含まれる液体の多くが元あったところから分離し,好ましい製パン性を得るために必要なドウマトリックス中の水の欠如をおこした結果,製パン性の低下が引きおこされたものと結論づけた。しかし,砂糖とイーストを加え,さらに一次発酵,成形,二次発酵を行うことによってコントロールのレベルにまで回復できた。

LED光源を用いたラディッシュの湛液型・静止法による養液栽培

小林 晶子

 養液栽培とは,土を使用せずに,水に肥料を溶解した培養液によって作物を生育させる栽培法をいう。日本では,1946年に滋賀県・大津と東京・調布に建設された「ハイドロポニックファーム」で実用的な養液栽培が開始された1)。ここでは,アメリカ軍が駐留兵に清潔な野菜を供給することを目的として,礫耕栽培が行われていた。礫耕栽培は直径5〜10 mm程度の礫を固形培地として用い,養分を培養液で供給する。1960年代に入ると,日本人によっても研究が始まり,農林省園芸試験場の山崎・堀が礫耕栽培を開始し2),農家に導入されるようになった。その後,日本独自の方式である,DFT方式(Deep Flow Technique, 湛液型循環式水耕)が開発された。DFTでは,栽培容器内に一定量の培養液を保持しながら,強制循環する方式をとる。DFTは礫などの固形培地を使用する必要がないため,栽培が容易であり,葉菜類を中心に普及した。現在でも多くの栽培面積がある2)。1980年代になるとイギリスで開発されたNFT方式(Nutrient Film Technique, Nutrient Flow Technique)が導入された。NFTは,水深の浅い培養液で行う養液栽培で,培養液が自然に流れる仕組みになっている。根系の大部分が空気中に形成されるため,根への酸素供給が容易となる。また,ほぼ同時期に,ロックウールを固形培地として用いる方法が導入された。これは,オランダで開発,実用化が進められた方式で,最近まで日本で最も大きい栽培面積をもつ養液栽培システムであった1)。現在では,ヤシがら繊維,樹皮,籾殻などの有機質資材を培地とする養液栽培システムが増加している2)。

アマニパン摂取による食後血糖上昇抑制効果

高見澤(内田) 菜穂子、本 三保子、鬘谷 要、橋詰 直孝、矢澤 一良

アマニとは中央アジア原産の亜麻(Linum usitatissimum)の種子である。アマニは日本ではなじみの薄い食材であるが,欧州では古くから食されている食材である。アマニは炒った状態で市販されており,サラダや料理にふりかけて食したり,シリアルやパン,マフィンに入れて食したりと,日本食におけるゴマのような用途で食されている。アマニの一般分析では,およそ脂肪が40%,たんぱく質が20%,食物繊維が28%,水分が7.7%,その他に灰分が含まれると報告されている1)。また,アマニの全脂質のうちの53-57%がn-3系脂肪酸であるα-リノレン酸であることや2),他の穀類と比較してリグナン含量が多い3, 4)という特徴がある。アマニにはリグナンや必須脂肪酸であるα-リノレン酸の含有量が多いことから,アマニの抗酸化作用5)や血清脂質および心血管保護作用6, 7)が報告されている。これまでに,ヒトを対象とした検討によりアマニ摂取による抗糖尿病効果が確認された報告8-10)と,明らかなアマニ摂取の効果が確認できなかった報告11-13)があり,更なる臨床データが必要とされている。
 糖尿病の予防,悪化防止には食後の高血糖の是正が有用であることが臨床的に示されており14),糖尿病が心血管疾患の大きなリスクファクターであるとされている15)。そのような中,近年,食後の血糖上昇を抑える方法として低グリセミックインデックス(GI)の概念16)が特に注目されている。国際糖尿病連合が発表している食後の血糖コントロールに関するガイドライン17)では,低GI食品が食後の血糖コントロールに有益であるとしている。そのため,食後血糖値の上昇を穏やかにする食材の探索が求められており,血糖コントロールに有益でかつ日常生活に取り入れやすい食品の提供が求められている。
 そこで,本稿では食後の高血糖抑制に有用な食品を検討する目的で,アマニをパンに練り込んだアマニパンを作製し,以下に述べる2つの試験を行った。まず,健常日本人女性におけるアマニパンの食後血糖上昇に及ぼす影響を検討した。

血圧に関与する酵素の抑制物質の探索
Exploration and identification of anti-hypertensive substances in food materials

八巻 幸二

Abstract.
Anti-hypertensive substances originated from some food materials were explored and identified using renin-angiotensin system related enzymes. Firstly angiotensin I-converting enzyme (ACE) inhibitory activities of aqueous extracts of Chinese commercial soypaste were investigated. ACE inhibitors in the sample with the strongest activity were purified by ultrafiltration, solid-phase extraction and gradient HPLC. According to spectroscopic and mass spectrometry methods, a compound was estimated as C15H21NO7. It was supposed to be a conjugate of phenylalanine and glucose generated by Maillard reaction during soypaste production, providing support on the contribution of Maillard reaction products to the ACE inhibitory activity of the sample. Results further indicated that the total ACE inhibition by the sample occurred from the combined function of various bioactive substances. Furthermore renin inhibitory activities of three tea products were investigated. Water extracts from fermented oolong and black tea showed strong renin inhibitory activities. By the means of ultrafiltration, gradient high performance liquid chromatography and spectroscopic analysis, four active compounds were separated from aqueous black tea extract and identified as theasinensin B, theasinensin C, strictinin, and a hexose sulfate with a galloyl moiety, which had IC50 values of 19.3, 40.2, 311.1, and 50.2 μM against renin activity, respectively. Further detection indicated that the potent inhibitor theasinensin B was present only in black tea. These results revealed novel and potent tea-derived renin inhibitors and suggested another potential pathway for tea consumption to control hypertension. It seems that these identified materials as anti-hypertensive food components are very attractive to development of health functional foods.

食品・飲用分野におけるマイクロバブルの有効性

大成 博文,大成 由音, 大成 水晶

 かつて,日本経済の高度成長を支えてきた,わが国の産業が,電気・電子分野を中心に衰退し始めている。この衰退は,地方においてより顕著に出現し,その深刻な事態をさらに加速させている。
 この衰退を背景にして,それを打開する「地域に根ざした産業づくり」による「経済の自立」が,ますます重要な今日的課題となっている。
なかでも,その産業づくりにおいては,食品・飲用産業が果たしてきた役割は小さくなく,地域の経済を支える重要な柱のひとつになってきた。また,その柱の構築においては,地域に豊かに存在する産業資源を「いかに最高度な水準で活用するか」が問われ,そこに優れた「知恵と工夫」の発揮が求められてきた。
 周知のように,マイクロバブル技術は,筆者の一人である大成博文によって1995年に創成された1)。その特徴は,適用可能な分野が非常に広大であり,しかも最も典型的な「生物適応物質」である「水と空気」を用いて,優れた物理化学的特性と機能性を発揮できることにある2)。
 すでに,水産業,水質浄化,製造業など多くの分野において重要な成果がいくつも生み出されてきており1-4),それらの実績を背景にして,2008年には「マイクロバブル発生装置」が経済産業省の「地域産業資源(山口県周南市)」として認定されている。
 以上を踏まえ,本論では,食品・飲用分野において,マイクロバブル技術を適用した具体的な事例を紹介し,その有効性と今後における発展の可能性について考察する。

カボチャの過去・現在・未来
− 北海道農業研究センターの取り組みと今後の課題 −

嘉見 大助

 当方の研究内容はカボチャの品種開発であるため,「New Food Industry」の投稿内容とは異なることは理解しつつ,上記のタイトルについて報告することにした。まずはカボチャの「過去」について述べ,「現在」としてカボチャの取り巻く現状と筆者が所属する(独)農研機構 北海道農業研究センターの取り組みについて説明する。「未来」については予測や提案というよりは,「お願い」に近い内容を列記させていただいたことや一部筆者の主観が強く出ているところもあるが,それについてはご容赦願いたい。

組織の活性化と人材の育成〜
Improving the working environment and nurturing human resources :
働きやすい環境つくりから Importance of improving the working atmosphere

高山 史年

Abstract
In relatively smaller organization, it is difficult for staff members to keep their working motivation high. The first thing that the leaders should do to activate the organization and nurture human resources is to improve their working atmosphere. Once this was achieved, staff members could engage in the work more peacefully. Small organizations are not good at performing this, but such efforts will be rewarded.

要約
 小規模な組織において,組織の活性化及び人材の育成のために,職員に「何のために仕事をするか」という意識を抱かせることは難しい。そのためにまず取り組むべきことは,労働環境の整備である。これが達成されてはじめて職員は安心して仕事が出来るようになる。これは小規模な組織にとり苦手とする分野であり,だからこそ大事なのである。

クロレラ健康栄養研究会 第6回 誌上シンポジウム
健康長寿社会の正しい発展に寄与する食の科学のあり方と正しい普及推進に関する提言

対談者 山野井 昭雄氏(元 味の素株式会社 副社長)
山田 和彦氏(女子栄養大学大学院 教授)

マダイ,ニジマス,ヒラメにおけるカロチノイドの魚体内分布

酒本 秀一

 これまでに行ったマダイの体色改善試験1-4)で魚体の部位によっては餌として与えたカロチノイド(本報告で扱う色素はカロチノイドのみなので,以下単に色素と略記する。)とは違う色素が蓄積していたり,色素の種類は同じでもエステル型が違ったりしていることが分かった。よって本試験は,餌に含まれる色素が消化管から吸収された後どの様にして魚体の各組織に運ばれ,組織内で如何転換・蓄積され,何処からどの様な形で排泄されているのかを知る為の基礎資料を得ることを目的とした。
 供試魚には主として体表に色素を蓄積するマダイ,主として肉部に蓄積するニジマス,更に外見で色素等含まれているとは思えないヒラメの3魚種を用いた。夫々の魚を色素添加の餌で飼育した後,どの組織にどれ位の色素がどの様な形で蓄積しているかを調べ,色素の魚体内移動,転換,蓄積,役割,排泄等について考察した。
 以下,夫々の魚種について説明する。

“地域密着でキラリと光る企業”
日本で初めて動力式精米機を創造した『株式会社サタケ』2

田形 睆作

 「初代・佐竹利市の精米麦機の開発」について『神童と言われた初代・佐竹利市氏。33歳で天運を悟り,米作農民の労作業の機械化に生涯を賭けた。如何にして一粒の米を磨き上げるか,飽くなき夢は時代を越えて,大輪の花を咲かせた。』